今号の編集秘話は、前号(14号)の反響報告からです。毎号、たくさんの読者の方からご意見やリクエストをいただきますが、今回のみなさんからのお声はいつにもまして熱いものでした。
表紙に登場したのは、今をときめく女優の剛力彩芽さんということもあって、全国の小学生からはがきやメールがたくさん届きました。「剛力さんの笑顔を見ると元気が出る」という声が多かったです。関西のある学校からは「感想にかえて〜子ども応援便りvol.14〜」という文集が届きました。内容は子どもたち一人ひとりから剛力さんへあてたお手紙でした。詳しく聞いてみると、担任の先生が総合学習の時間を活用して、「『子ども応援便り』を読んで、剛力さんに手紙を書いてみよう」と呼びかけてくださったのだそうです。子どもたちは、剛力さんが小さい頃は人見知りが激しかったという話や、「何事もやってみなければわからない。やる前からあきらめないで」「人は一人ではなにもできない」というコメントに、「勇気をもらった」「これから友だちやお母さんをもっと大切にする」などと感想を書いていました。
思い返せばインタビューの日も、終始笑顔でこちらの質問に誠実に自分の言葉で語り、周りのスタッフへの配慮を忘れない態度に、取材したカメラマンや記者も、みんなファンになって帰ってきたものです。テレビを通して伝わってくる明るく利発なイメージそのままのすてきなお嬢さんでした。文集は事務所さんを通して、剛力さんにもお見せしました。剛力さんも「私の方が励まされました」と、とても喜んでくれました。
そして、4面の美輪明宏さんの記事にはお母様方や先生方から、それはそれは熱いお手紙が届きました。もともとファンだったという方も多く、「よくぞ、インタビューしてくれました」と、編集室へのお褒めの言葉も。「どの育児書よりも、この記事の中の美輪さんの言葉が私の力になりました」というお手紙を編集者冥利に尽きる思いで読ませていただきました。
取材は、美輪さんのご自宅で行われましたが、多忙を極める中、「子どものこと」「教育のこと」はとても大事なことだから、とお引き受けいただいたのです。午前中の取材が終わると、すぐにその足で九州に向かわれました。インタビューの中で、子どもたちが美しい音楽やアート、そして何より美しい言葉遣いやマナー(礼儀)に触れることの大切さを熱くお話しされました。時々、シャンソンなどの歌を交えながらお話してくださるのです。美輪さんのお話自体が芸術のようでした。「なんという贅沢、なんという役得」と感謝しながら聞いていました。そして、不思議なことに帰り道、スタッフが口々に「体が軽くなったように感じる」と。私も同感でした。まさに心洗われる取材でした。そういえば、帰り際、玄関まで送ってくださり、私たちに向かって「ごきげんよう。さようなら」とおっしゃいました。毎朝、NHKの連続テレビ小説「花子とアン」の美輪さんのナレーションの「ごきげんよう」の言葉を聞くたびに、その時の凛としたお姿と笑顔を思い出し、背筋を正しています。
さて、今号の表紙は女優にキャスターにと活躍中の桐谷美玲さん。4面は野球解説者の古田敦也さんです。桐谷さんからは、お人形のように可愛らしい姿からは想像できないような意志の強さを感じました。真っ直ぐに記者たちの目を見て、質問に的確に、具体的に言葉を選びながら応じる桐谷さん。同行した新米記者が舞い上がり、顔を真っ赤にしながら質問した際には、さりげなく彼女がキャスターを始めた頃の失敗談を盛り込みながら語ってくれました。聡明で、真っ直ぐで、誠実で。誰にも公平に接する彼女の中にジャーナリストを見た気がします。報道キャスターとしての活躍がますます楽しみです。余談ですが、彼女のお母様と私が似ているのだそうで、取材中、ずっと授業参観みたいな気がしていた、と。取材終了後、マネージャーさんと「びっくりしたあ」とはしゃぐ様子の可愛らしいこと。楽屋からスマホを持ってきて、お母様の写真を見せてくれました。その後、火曜日のニュースZEROを母の気持ちで見ています(笑)。
古田さんインタビューには、幼い頃から古田さんの大ファンだった記者が立候補しました。ドキドキして待つ中、扉が開くやいなや「こんにちは。よろしくお願いします」との古田さんの明るい声が響き、一気に会場が華やぎました。笑いの要素をふんだんに交えながら、たくさんのエピソードを語ってくださる古田さんにスタッフは大感激。思わず、カメラマンも声をたてて笑ったり、「なるほど」とつぶやいたり。なにしろひとつひとつのお話が小話のように落ちがあり面白いので、「へえー」と感心しているうちに、1時間という取材予定時間があっという間に過ぎてしまいました。「教育」への提言は、ともすれば優等生的で、当たり前のメッセージになりがちなのですが、古田さんからのメッセージは、本音ベースでとても考えさせられる切り口です。記事には自らさまざまな試練を乗り越え、野球界のリーダーとしてチャレンジを続けていらっしゃる古田さんならではの言葉が詰まっています。
今号の特集は、「ネットいじめ」や「ネット犯罪」への予防的な取り組みとなる「情報モラル」「メディア・リテラシー」です。「情報モラル」の実践研究において、日本の第一人者と言われている岐阜聖徳大学の石原一彦教授は、元小学校の先生。いわゆる「べき論」だけでなく、学校現場で生かせる情報モラルについて詳しく教えていただくことができました。現状の情報モラル関連の教材の多くが「あれをやってはダメ」「これをやったら恐ろしいことになる」という「禁止教材」「脅迫教材」なので、子どもたちは興味が持てない。そこから見直さなければ、というお話が印象的でした。美輪さんも「上から目線で、『ねばならない』という教育は楽しくない。マナー講座のようなスタイルにすれば子どもたちも喜んで学ぶのではないかしら」と、アドバイスされていました。子どもたちが「主体的に楽しく学ぶ」ことができるよう教育環境を整えることが大人の役割なのだと改めて考えさせられました。
それにしても、編集していてつくづく感じるのは、読者のみなさんのセンスというか人を見る目の鋭さです。ご承知のように、当紙のインタビュー相手はみなさんからのリクエストで決まります。表紙は子どもたちの、4面は保護者や教職員のみなさんの声に沿ったものです。
ちょっと意外ですが、世間で知名度・人気度は高くても当紙にはリクエストがあまり来ない人もいれば、その逆に知名度はまだ高くないのにリクエストが集まる人がいるのです。そうしたリクエストに応じて、みなさんの代わりにお話をうかがいに行くのですが、登場された方は人気だけでなく、人柄も際立って素晴らしいのです。よく、「子ども応援便りには、ほんとうに時の人が揃って出ているね」と言われるのですが、週刊誌でもない当紙では、実は取材はかなり前に行うのですが、不思議なことにどの方も取材後、より一層活躍されていくのです。広告を一切掲載しない当紙では、あくまでも発行の趣旨をご理解いただき、賛同という形でご登場いただいています。読者と取材相手はおのずと共鳴しているのでしょうね。取材後も、編集室や学校や子どもたちとのつながりを大切にしてくださる方ばかりです。東日本大震災の直後も、あっという間にみなさんからのメッセージで号外ができました。ほんとうにありがたいことだと思っています。
これからも、こうした輪を広げ、よりよい教育の実現へ向けて微力ながらお手伝いを続けていきたいと思っています。今回もたくさんの出会いとご協力に感謝しています。みなさま、ほんとうにありがとうございます!