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最新調査から見る日本の教育の課題〜子ども、教職員が安心できる教育環境へ〜

 OECD(経済協力開発機構)の最新の調査報告『図表で見る教育2026』から、国際的にも突出した教員の長時間労働や重い私費負担など、日本の教育が抱える構造的課題が改めて浮き彫りになりました。
 少子化が加速する今、公教育を支える公的投資の拡充と学校の働き方改革が不可欠です。
 本号では最新の客観データに基づき教育現場の実態を明らかにし、課題解決の鍵となる令和9年度概算要求の内容を検証します。

1 公的支出の少なさと重い私費負担

 日本の教育が直面している構造的な課題の一つに、教育に対する公的支出の少なさと、それに伴う各家庭の私費負担の大きさが挙げられます。2026年9月にOECDが公表した最新の報告書『図表で見る教育2026』のデータは、この現状を明確に示しています。
 まず、国や地方自治体などからの教育機関に対する公財政支出がGDP(国内総生産)に占める割合を見てみると、日本は2.6%と、OECD平均の3.9%を大きく下回っています。この数値は、国際的に見ても日本の教育に対する公的な財政支援が相対的に少ない水準にあるということを表しています。
 さらに、教育支出を学生・児童生徒1人当たりの金額(購買力平価換算)で見ると、その差はより具体的に表れます。初等教育から高等教育までの全教育段階を通じた1人当たりの公財政支出は、OECD平均が1万3千601米ドルであるのに対し、日本は1万323米ドルとなっており、すべての教育段階において平均を下回る水準です(図表1)。

図表1 子ども1人当たりの公財政教育支出(全教育段階)
出典:OECD「Education at a Glance 2026」

 このように公的な支出が限定的である結果として、教育費全体に占める私費負担の割合が大きくなっているのが日本の特徴です。
 教育機関に対する支出の公私負担割合(全教育段階)において、日本の公財政支出の割合は73.3%となっており、残りの26.7%を私費で負担している状況です。これは、OECD平均と比較しても約11%高く、国際的に見て、日本の教育への支出は私費に依存していることが大きいということが分かります(図表2)。

図表2 教育機関に対する支出の公私負担割合(全教育段階)
出典:OECD「Education at a Glance 2026」

 近年、物価高騰が続く中で、こうした私費負担の高さは家計に影響を及ぼしています。教育費の負担が家庭の経済力に依存する現状は、子どもたちの学びの機会や進路選択にも影響を与える可能性があります。
 教育の機会均等を保障し、すべての子どもが質の高い教育を受けられる環境を整えるためには、社会全体で教育を支えるという観点から、国や自治体による公的な教育支出の拡充といった対応が重要です。

2 相対的貧困と教育格差の拡大

 私費負担への依存度が高い教育構造の下では、家庭の経済状況が子どもの教育環境に直結しやすくなります。
 厚生労働省が26年7月に公表した「国民生活基礎調査」によると、24年の日本全体の「相対的貧困率」は15.0%でした。そのうち17歳以下を対象とした「子どもの貧困率」は11.0%となっており、およそ9人に1人の子どもが貧困状態にあるとされています(図表3)。

図表3 貧困率の年次推移
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」

 12年以降、子どもの貧困率は低下傾向にはあるものの、世帯類型別に見ると状況は異なります。おとなが2人以上いる世帯の貧困率が6.7%であるのに対し、おとなが1人の世帯(ひとり親世帯)の貧困率は44.7%と極めて高くなっており、半数近くが貧困線を下回る水準にあります。
 このような相対的貧困は、生活基盤の脆弱さだけでなく、塾や習い事、学校外での様々な学習・体験の機会に影響を与え、学力や経験の「格差」を生み出す可能性があります。文部科学省の調査によると、年収400万円未満の家庭と1200万円以上の家庭では、学校外活動費に約3倍の差があると指摘されています(図表4)。日本では高等教育の私費負担割合が国際的に見ても非常に高いため、家庭の経済力が進学機会を制限する要因にもなり得ます。

図表4 世帯の年間収入別の学校外活動
出典:文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」

 すべての子どもたちが家庭環境に左右されないための教育環境の整備は、社会全体の課題です。給付型奨学金や就学援助の拡充、中学校も含めた給食費無償化といった「学びのセーフティーネット」を強化する施策が求められます。

3 多忙化の現状と教育環境の改善

 OECDの最新データは、日本の教員を取り巻く過酷な労働環境と、児童生徒一人ひとりにきめ細やかな支援が届きにくい現状も浮き彫りにしています。
 まず、教員の労働時間を見ると、日本の教員は同等の学歴を持つ他業種の就業者と比較しても、週に6.3時間長く働いています。これは、比較可能な参加国の中で最大の開きで、授業時間だけでなく、務負担や課外活動などの業務が要因だと分析されています。実際、給与以外の勤務条件に満足している前期中等教育の教員の割合は37.3%にとどまり、OECD平均の68.4%を大きく下回っています。
 さらに、1クラスあたりの児童生徒数の多さも課題です。24年時点での日本の平均は、小学校で27人、中学校で32人となっており、OECD平均と比べて突出して多くなっています。中学校の1クラスあたりの生徒数は、OECD加盟国の中でも最大級の水準です(図表5)。

図表5 小中学校1クラスあたりの児童生徒数
出典:OECD「Education at a Glance 2026」

 一方で、人口動態の変化は教育システムに新たな側面をもたらしています。日本の5〜14歳の人口は、24年から33年にかけて19%減少すると予測されています。OECDの報告書では、この子どもの数の減少を単なる教員数や教育予算の削減理由とするのではなく、学級規模を縮小し、多様化する子どもたちへのサポートを充実させるための「資源再配分の機会」として活かす可能性が指摘されています。

4 令和9年度 文部科学省 概算要求

 令和9年度概算要求には、山積する教育課題に対応する予算が盛り込まれました。
 一つ目は家計の教育費負担軽減です。「高校生等への修学支援」に5千817億円を要求し、授業料無償化等を推進。「高校生等奨学給付金」では低所得世帯への給付早期化、学校給食費の抜本的な負担軽減のための予算も計上しました。
 二つ目は不登校対策等の学びの保障です。校内教育支援センター支援員やスクールカウンセラーの重点配置、保護者への相談体制強化に122億円を要求しました。
 三つ目は働き方改革と指導体制の充実です。中学2年の35人学級など定数改善を進めるほか、教員業務支援員の全小中学校配置等に167億円を計上しています。
 これら予算の確実な措置が求められるとともに、現場の負担軽減と豊かな学びの実現のため、来年度以降も教育予算拡充が必要です。

図表6 令和9年度 概算要求の主な内容

情報ファイル

業務量管理・健康確保措置実施計画

 本来の指導にとどまらず多岐にわたる役割が教員に集中する現状を是正し、より良い教育環境を整えるため、26年4月施行の改正給特法等により、教育委員会に対して「業務量管理・健康確保措置実施計画」の策定が義務付けられました(図表7)。

図表7 「業務量管理・健康確保措置実施計画」とは?(国の指針等を踏まえ各自治体の実態に応じて設定)
出典:文部科学省「『業務量管理・健康確保措置実施計画』策定状況のフォローアップの結果について」

 文部科学省が同年6月に公表したフォローアップ調査によると、4月1日時点で都道府県及び指定都市の100%(67教委)、市区町村等の約81%(1420教委)が既に策定済みです。未策定の市区町村等も含め、26年度内には全国すべての教育委員会で出揃う見通しです。
 一方、策定にあたり保護者や地域住民等への情報発信や意見反映の機会を設けた教委は、都道府県で22団体、指定都市で8団体、市区町村等で455団体にとどまり、半数以上で機会がありませんでした(図表8)。

図表8 計画策定にあたっての保護者・地域住民等の意見反映・情報発信
出典:文部科学省「『業務量管理・健康確保措置実施計画』策定状況のフォローアップの結果について」

 学校の負担軽減には地域社会の理解と協力が不可欠です。首長との協議機関である総合教育会議への計画報告は、26年4月1日時点で計画策定済みの全教委が行う予定です。多くの計画で29年度までに「時間外在校等時間月平均30時間程度」の達成目標が掲げられているものの、具体的な業務削減策や予算措置が不十分なものも散見されます。首長部局との連携による人員や予算の裏付け、支援スタッフ配置や業務精選など、実効性を伴う具体的な措置が求められます。

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