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どうなる!?次期学習指導要領〜学校の「これから」を考える〜

 「最近の学校は行事や授業で忙しそう」と感じている保護者の方や子どもたちは少なくないかもしれません。
 実は、学校で「何を」「いつ」「どれくらい」学ぶかを定めている国の基準があります。それが「学習指導要領」です。
 2026年5月現在、この基準を約10年ぶりに見直すため、中央教育審議会での議論が進んでいます。
 学習指導要領が変わると、毎日の授業や教科書はどうなるのでしょうか。
 現在、国で進められている改訂に向けた議論のポイントや、それが学校現場にどのような影響をもたらすのかについて、これまでの歴史も振り返りながら整理して見ていきましょう。

1 そもそも学習指導要領って?

 子どもたちが学ぶための教育計画である教育課程は、子どもたちの状況や特性と学校・地域の実態を十分に考慮して、各学校において編成します。各学校が教育課程を編成する際の基準となるものが学習指導要領です。文部科学大臣が公示するもので、「各教科等の目標、内容等について大綱的な基準を定めたもの」、「地域の実情等に応じて弾力的な運用ができる内容を含んだもの」、となっています。
 子どもたちが毎日使う「教科書」は、民間の教科書発行者が作成し、国の「教科書検定」を経たものが学校で使われますが、この学習指導要領に準拠したものとなっています。つまり、学習指導要領が変われば、子どもたちが使用する教科書の中身も変わることになります。
 学習指導要領はおよそ10年に一度、社会の変化に合わせて見直されてきました(図表1)。1989年改訂では知識の詰め込みから子どもの関心や意欲を重視する方向へシフトし、小学1、2年生の理科と社会を廃止し「生活科」を新設。1998年改訂では「ゆとり教育」が本格的にスタートし、詰め込み教育が見直されて学習内容が約3割削減されました。完全週休2日制になり、自ら課題を見つけて探究する「総合的な学習の時間」が始まったのもこの時期です。
 しかし2000年代に入ると、国際的な学力調査での日本の順位低下などを背景に、2008年改訂で「脱ゆとり」へと大きく方針転換されます。学習内容や授業時間が再び増加に転じ、教科書のページ数も急増しました。また、グローバル化を見据え小学5、6年生で「外国語活動」が開始されました。
 現行の学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」がキーワードとなり、新しい学びが次々と追加されました。道徳が「特別の教科」になり、小学5、6年生の英語の教科化や小学3、4年生の外国語活動、小学校のプログラミング必修化、高校の新科目誕生と、学習内容は多岐にわたるようになりました。
 こうして学習内容が増え続けたことは、教員の多忙化の要因の一つと言われています。

図表1 学習指導要領の変遷と主な教科・制度

2 次期学習指導要領の改訂スケジュールは?

 学習指導要領は、国が新しい内容を発表(答申・告示)してから、実際に学校の授業で使われるまでに数年間の準備期間が設けられます。新しい基準に沿った教科書が作成され、国の検定に合格し、各地域で採択されて学校に供給されるまでに一定の時間が必要となるためです。教職員が新しい授業の準備を行うための大切な期間でもあります。
 また、すべての学校種で一斉に新しく始まるのではなく、学校種によって時期がずれるのも大きな特徴です(図表2)。文部科学省が想定する次期改訂のスケジュールでは、2025〜2026年度にかけて中央教育審議会などで議論が行われ、その後に新しい内容が正式に発表されます。
 実際は、まず2028年度から幼稚園で全面実施されます。続いて、2030年度から小学校で全面実施となり、全学年で新しい教科書の使用が始まります。中学校はその翌年の2031年度から全面実施となる予定です。
 高等学校については、2032年度の入学生から年次進行で実施されます。全学年が一斉に切り替わるのではなく、新1年生から順番に新しい内容を学んでいくことになります。
 このように、子どもたちの学びの連続性に配慮し、時間をかけて段階的に導入されます。

図表2 次期学習指導要領等の改訂スケジュール
前回の改訂と同様のスケジュールと仮定した場合の予定であり、今後の審議等により変更される可能性がある。

3 次期改訂の注目ポイント

ポイント@「教育内容の精選」

 学習内容について、「精選(削減)する必要があるのでは」との議論が始まっています。また、「柔軟な教育課程の実現」という視点から、標準総授業時数を現在以上に増加させないことを前提に、総授業時数と教科標準時数の扱い、単位授業時間と年間最低授業週数の扱い、学習内容の学年区分の扱いなどの見直しが検討されています。学校現場からは総授業時数削減を求める意見もあります。子どもたちの心身の負担や教職員への過度な負担とならないような教育内容の実施が求められます。

ポイントA「ウェルビーイング」

 次期改訂に向けた中教審への諮問では、教育振興基本計画でも掲げられたウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良い状態にあること)の向上が重要な視点とされました。子どもたちが安心して学ぶためには「教職員のウェルビーイング」も重要です。同時期に進められる学校の働き方改革と連動し、現場の過度な負担とならない柔軟な教育課程のあり方が問われています。教職員が心身ともに健康でゆとりをもって教育活動にとりくめる環境づくりへとつながるか、注視していく必要があります。

ポイントB「部活動の地域展開」

 部活動の学習指導要領上の位置付けについては、引き続き「学校教育の一環」とする方向で検討がされています。一方で、教員の長時間労働の主要因とされてきた部活動を地域へと展開していく中で、その位置付けを見直すべきとの意見もあります。地域展開によって教職員の負担軽減が期待されますが、受け皿となる指導者の確保など課題は少なくありません。今後、部活動の実施が学校や教職員の負担とならないよう、国や自治体によるスムーズな移行に向けた実効性のある仕組みづくりが不可欠です。

新指導要領を絵に描いた餅にしないために
教育予算拡充へ社会全体で声を
大阪教育大学
大学院連合教職実践研究科
准教授
田中真秀さん

田中真秀さん

 学習指導要領改訂を議論する上で最も大切なのは、「子どもの視点」に立つことです。学習内容の精選においては、全員が共通で身につけるべきことと、特性と個々の子どもの状況に合わせて育むべき力を多角的に見極める必要があります。子どもたちが心と時間にゆとりを持ち、詰め込みではなく自ら考え導き出す力を養うため、状況に合わせて柔軟に教育課程を編成できることが重要です。
 同時に、指導する教職員が心身ともに健康である「ウェルビーイング」の実現が大前提となります。現状の学校現場は、時間的にも精神的にも限界に近い状態です。例えば、地域のボランティアの協力で教職員の休憩時間を確保したり、複数担任制で子どもたちをチームで見守ったりと、学校ごとの実情に合わせて選択できる柔軟な体制づくりが求められます。そうしたゆとりが教職員の働きがいを生み、結果的に子どもたちへの良い影響につながるのです。
 どれほど素晴らしい学習指導要領や制度を描いても、それを現場で実行する「人」と「予算」がなければ、すべては「絵に描いた餅」に終わってしまいます。少人数学級のさらなる推進や教職員定数の抜本的な改善など、教育環境を支える条件整備が不可欠であり、そのためには「教育予算の拡充」がセットで行われる必要があります。
 次期改訂を希望あるものにするため、まずはすべてのおとなが教育の現状に関心をむけ、当事者として自覚を持つことが大切です。未来の社会を担う子どもたちのために、教育には人と予算が必要だと社会全体で声を上げていきましょう。

情報ファイル

現在の働き方を定年まで続ける
6割の教職員が「不可能」と回答

 次期学習指導要領の議論が進む一方で、現在の教育現場はどのような状況にあるのでしょうか。2025年に実施された日本教職員組合の青年部を対象とした「職場実態調査」によると、1カ月の時間外勤務時間は全校種平均で46.3時間となっています。特に中学校では56.5時間に達しており、上限時間(月45時間)を超えている状況です。さらに、「持ち帰り業務」も月平均7.4時間発生しています。
 「1日の休憩時間」は、全校種平均でわずか14分という結果でした。そして、半数が、1日の休憩時間を「0分」と回答しています(図表3)。特に幼稚園(平均9.7分)や小学校(平均11.7分)では、「子どもがいる時間は休憩をとることができない」との声があがっています。また、養護教員や事務職員からも、子どもに関わる対応で休憩時間がなくなる現状が報告されています。
 現在のような働き方を定年まで続けることは「可能だと思う」と回答した割合は14.2%にとどまり、「不可能だと思う」は61.1%にのぼりました(図表4)。自由記述からは、人員不足の中、病休や産・育休の代替教職員が見つからない実態、膨れ上がる業務量を一人ひとりの努力でこなしている状況が明らかとなりました。年休などについても、周りへの負担や代わりがいないことから、休むことに抵抗を感じて遠慮している教職員が多く存在しています。
 今回の調査結果から、多くの教職員が時間外勤務や休憩時間が取れないなど、過酷な状況下で業務にあたっている実態が示されました。次期学習指導要領の議論とともに、それを担う教職員が健康に働き続けられるための人員確保や環境整備が重要な課題となっています。

図表3 1日の休憩時間*は、およそ何分間とれているか
*勤務時間の途中で勤務から解放されることが保証される時間のこと
図表4 現在の働き方を定年まで続けることは可能だと思うか
出典:日本教職員組合「25年度青年部職場実態調査」
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