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なぜ必要?学校における働き方改革

 PTAという名前を一度も聞いたことがないという人はほとんどいないのではないでしょうか。
 しかし、どんな組織か、どんな活動をしているか、どうして必要なのか、関わって初めてわかったとの声も聞かれます。
 そこで、日頃からPTAに携わる保護者や教員のみなさんによる座談会を開催。
 PTAの現状や意義、今後の展望をそれぞれの見地から語っていただきました。

  • 関東甲信越地方 中学校PTA 40代男性

    「子どもたちのために」という視点を大切に活動しています!

    中学校のPTA会長、郡市PTA会長、県PTA連合会の会長などを務める。3人の子どもの父親。

  • 東北地方  小学校PTA 40代女性

    学校と地域とを結びつけるパイプ役を担う組織に

    小学校のPTA会長を3年務めたのち、同PTAの顧問となる。3人の子どもの母親。PTA協議会の副会長も兼務する。

  • 中部地方 小学校教頭 50代男性

    保護者や地域のみなさんとより良い学校をつくっていきたい

    現在の学校は児童数が約500人の中規模校。以前は中山間地の小規模校に赴任した経験を持つ。

1 保護者と教職員それぞれが担う役割

各学校のPTA組織は一般的には次のようになっています。会長、副会長などの「役員」が総会の運営など活動全般に関わります。総会で決まったことを「学年委員会」や「専門委員会」の委員を中心に実行していきます(図表1)。具体的には、学校行事への協力、保護者と学校の情報共有、保護者同士の親睦などです。

PTA活動を通じて先生と直接やり取りすることが増えました。以前よりも顔が見える関係になり、教室の様子がより明確にイメージできる。子どもの口から伝え聞く先生の言動も、ご本人を知っていれば、「あの先生が言ったのなら、こういう意味だろう」と想像しやすくなりました。

教職員と保護者の方々の距離が近づくきっかけにもなるんですよね。お互いを知ることで生まれた信頼関係は、必ず学校教育においてプラスに作用します。

普通は、保護者が担任以外の先生と接する機会はそれほど多くはありません。PTAはその橋渡しの場でもあると思います。PTAは要らないといった論調もありますが、PTAがなくなると学校教育は立ち行かなくなると思います。

同感です。私は教頭として、教職員と保護者の関係をどのようにコーディネートできるかを考えています。

日頃から先生が頑張っている姿を目の当たりにするので、子どもを預けて終わりではなく、もっと積極的に学校教育に参加しようという思いを持つようになりました。

PTAの存在意義は、子どもの健全育成のため保護者と教職員が協働するということです。学校と家庭が同じ方向を向いて、それぞれができることをする。それは子どもの育ちに大きく貢献すると思います。協力して教育活動を活発にすることが重要だと考えています。

図表1 PTA組織の構成例

2 地域によっても異なる活動内容と関わり方

PTAの活動内容は、学校や地域によって多少異なります。特に児童・生徒数の少ない学校では、地域独自の活動が多い印象です。以前に勤務していた小規模校では、授業で福祉教育を学んだ後、学習内容に沿って地域の高齢者と交流するというとりくみをしていました。この調整役をPTAが担ってくれていたのです。

私が住む地域は稲作が盛んで、季節の行事として田植えや稲刈りがあります。収穫したコメは冬に餅つきをして子どもたちに振る舞われます。その際の指導や土地の提供を含め、全て地元の農家のボランティアが協力してくれています。PTA役員や先生も子どもと一緒に田んぼの中で汗を流すので、良い交流の機会になっています。

ボランティアの存在は本当にありがたいです。登下校のサポートをはじめ、花壇や畑の管理、ミシンを扱う授業や調理実習のお手伝いなど、地域のみなさんが学校教育へ積極的に参加してくださることには感謝し尽くせません。

私の地域でも、学校支援ボランティアの一部を「見守り隊」として登録したうえでご協力いただいています。元気な祖父母世代を巻き込むことで、親世代の負担を軽減できるし、おじいちゃんやおばあちゃんにとっては子どもたちと触れ合うことが生活のハリにつながる。学校や保護者のみならず、地域全体で子どもの成長を見守る、まさに相乗効果が期待できます。

年度末にはボランティアの方を学校に招き、子どもたちと一緒に給食を食べてもらい、感謝状を贈呈しています。

またもう一つ特色あるとりくみを挙げると、夏休み期間中のプール開放があります。学校が休みの間、プールが使えないのはもったいないと、PTAが市の教育委員会にかけ合ったところ、助成金を出してもらえることになりました。それで監視員を雇い、足りない部分は保護者が救命救急講習も受講して当番制で担っています。多忙な先生たちにお手伝いをお願いすることは申し訳ないですから。

私の学校でもプール開放をしていますが、教員が監視に立っています。でも、夏休みは研修会が多くて忙しい時期ですし、教員の休暇も必要です。万全の体制を整えるにはマンパワーが足りません。そのようなスキームが全国に広がるといいなと感じます。

3 これからの時代に合ったPTA活動とは?

共働き世帯の増加や教職員の過密勤務の問題など、時代の変化とともに教育を取り巻く状況が大きく変わりつつあります。

文部科学省の中央教育審議会を中心に、学校の働き方改革が議論されています。
答申には、改革の実現にはPTAの理解と協力が不可欠だと触れられています。

PTA活動をしていて、先生たちのご苦労をひしひしと感じます。学校教育の質を維持するためにも、このままでいいはずがありません。一方で、PTA自体も担い手不足という悩みを抱えています。

確かに、PTA活動に時間を割かなければならないという負担感はありますが、それ以上に、やって良かったという思いの方が強いです。

「PTAの仕事は大変だ」というイメージが先行して、尻込みしてしまっている面も大きいと思います。

未知の世界に足を踏み入れる不安もあるでしょうね。実際に経験した人の生の声を広く伝えてもらいたいです。

PTAは私にとっては大切な学びの場でした。いじめや教育、社会について初めて本腰を入れて勉強できた。心から感謝しています。

人々の関係性が希薄化する現代社会で、地域とのつながりを感じられるPTAのとりくみは貴重です。行事などでことあるごとに顔を合わせるおとなが増えれば、子どもにとって頼れる存在が増えますよね。その価値は計り知れません。

地方と都市部を同列に考えることはできませんが、学校を中心に人々がつながることで、地域の活性化にも役立ちそうです。

負担軽減に向けた運営方法の見直しも重要です。ITスキルの高い人は書類作成を、文章を書いたり写真を撮ったりするのが得意な人は広報紙の製作を担うなど、それぞれの得意分野を生かすことも重要だと思います。学校での会議を減らし、ネット会議を導入するなども有効かもしれませんね。

会長になってから、不必要と判断したものはできるだけ効率化しました。出席する会合の数を減らし、役割も固定化せずにその時できる人が担うようにしました。共働き家庭が増えるなど、家庭環境が複雑化する中、誰もが無理なく参加できる形にしていくことが重要なのではないでしょうか。

Q&Aで知ろう!  PTAにまつわる素朴な疑問
どんな組織なの?

「PTA」は、Parents(親)、Teacher(教員)、Association(団体)の頭文字をとったもので、保護者と教職員が協力し、子どもたちの健全育成をめざす社会教育関係団体です。第二次世界大戦後、教育の民主化のために来日したアメリカ教育使節団が自国のPTAを紹介し、結成を奨励したことから普及しました。日本のPTAは、学校単位で組織され、保護者と教職員を中心に活動しています。学校教育への協力・連携だけでなく、地域社会と一体化しつつ子どもを見守るとともに、保護者が子育てや教育について学ぶための成人教育の場にもなっています。

PTAの役職って?

役職には「役員」と「委員」があり、PTA活動を中心となって推進していきます。役員は、PTA活動の運営全般を担当します。学校、地域、他地区のPTAなどとのつなぎ役も担っており、特に会長は代表として学校・地域行事、対外的な会合などに出席します。委員は、総会で決定した方針に基づいて各委員会の活動を実施します。定期的に役員会や委員会が開催され、活動計画の策定や活動状況の報告が行われます。役職がない人は、各委員会で実施される研修会や学校行事のボランティアとして参加したり、PTAとして実施しているベルマーク収集に協力したりするなどが主な関わり方になります。

近年、共働き世帯の増加などにより、活動への参加率の低下が課題となっています。単位PTAの中には、会議や活動の実施日、担当の割り振りの仕方を見直すなど、家庭や仕事の状況によらず誰もがPTA活動に参加できる体制づくりの工夫が進んでいます。

組織体制は?

PTA活動の中心は、学校単位で組織された単位PTAですが、個別の学校を超えた地域的・全国的な課題に対応するため、PTAの連合体を形成しています。単位PTAが集まって、市区町村単位のPTA連合体(◯◯市PTA連合会など)を、さらに市区町村単位のPTA連合体が集まって、都道府県の連合体(◯◯県PTA連合会など)を組織します。全国組織の日本PTA全国協議会は、都道府県・政令市単位のPTA連合会が加盟する形を取っており、全国9つのブロックに分かれています。

どんな構成なの?

PTAの議決機関は総会です。総会は、会員が集まり、PTAの活動方針や会計について、話し合って決めるところです。会長、副会長、会計、庶務などの「役員」が総会の運営をはじめ、PTA全般に関わる仕事をします。総会で決まったことに基づいて、実際に活動を担うのが「学年委員会」や「専門委員会」です。専門委員会の委員会名や活動内容は各PTAによって異なりますが、PTA向けの研修会などを企画する「教養・図書委員会」、PTA便りなど広報紙の発行をする広報委員会、健康に関する情報を発信したり研修を企画する保健委員会、子どもたちの登下校時のパトロールをしたりする安全委員会などがあります。

活動内容は?

各学校やPTAごとに特色ある様々な活動がありますが、ここでは多くのPTAで実施されている主な活動を紹介します。一つめは、運動会や遠足などの学校行事の運営を手伝う、卒業式や記念行事の際に記念品を贈呈するなど「学校教育の振興のための活動」です。二つめは、登下校時の安全パトロールなど「校外の生活指導のための活動」です。三つめは、地域行事に参加したり、広報紙を通じて学校や子どもたちの様子を地域に伝えたりするなど、地域と連携しながら「教育環境の充実を図る活動」です。四つめは、保護者自身の生涯学習の場として、子育てをはじめとした研修会の実施や保護者と教職員が親睦を深めるためのスポーツレクリエーション活動など「成人教育の活動」です。

情報ファイル

 「委員になったものの、何をするのかよくわからない」「書類作成に時間がかかる」「会長のあいさつではどんなことを話せばいいの?」など、PTA活動に関する疑問や不安を解消するため、具体的な活動内容や事例などを紹介した実践マニュアルがあります。行事などで使えるあいさつ文例のほか、教育用語、個人情報の取り扱いに関する解説なども収録されています。
 初めて役員や委員を任された保護者の方は特に、PTA活動を円滑に進めるため、こうしたマニュアルや書類フォーマットを上手に活用してみてはどうでしょうか。

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