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考えてみよう!!これからの日本の教育

〜最新調査の結果から〜

 2014年、OECDから、「図表でみる教育」「国際教員指導環境調査(TALIS2013)」といった教育に係る調査結果が公表されました。今回、最新調査の結果をもとに、日本の「教育予算」や35人学級などをはじめとする「教育環境」の整備、「教員の勤務環境」にフォーカスし、「どうすれば日本の教育は良くなるか」を考えてみたいと思います。

1.何が足りない日本の境域環境

 2014年10月、経済協力開発機構(OECD)から「図表でみる教育2014年版」が発行されました。同報告書には、OECD加盟国を中心に世界各国の教育予算や人的資源、教育機関の成果と教育・学習の効果、進学の状況など、データが豊富に掲載されています。
 教育関連の情報番組などで、よく見かける、「最新のOECDの調査では…」などの発言にも引用されることの多い同報告書は、教育全般について国際比較ができるインディケータ(指標)として信頼されています。
 最新版によると、日本の教育予算は、国内総生産(GDP)の約3.6%となっており、OECD各国の平均の約5.3%を大きく下回り、加盟国34か国中最下位となっています(グラフ1)。これで日本の最下位は5年連続となりました。

グラフ1 教育機関に対する支出の対GDP比

 一方で、保護者などが子どもの教育にかける私費負担は、対GDP比で日本が約1.6%、OECD平均が約0.9%となっており、日本は諸外国に比べて、「国が子どもたちの学校教育のために使うお金」が少なく、「保護者などが子どもの教育のために使うお金」が多い社会構造と言えそうです。

 教育環境面に関しては、保護者からのニーズの高い、少人数教育関連の項目を見ていきます。教員一人当たりの児童生徒数は、小学校・中学校段階とも、OECD平均を上回っています。(グラフ2)

グラフ2 教員一人当たり児童生徒数

さらに、学級規模から見ると、一クラスの児童生徒数は、小学校でOECD平均の約1.3倍、中学校で約1.4倍となっており、(グラフ3)国際標準という側面からも改善策が急がれる状況となっています。

グラフ3 1クラスの児童生徒数

2.少人数学級どんな効果があった?

 OECD平均を上回った一クラスの人数については、保護者からの改善要望の強い項目です。こうした要望を受けて日本の小学校では、法改正により2011年度から1年生で35人以下学級を実施しています。その効果はどうなのでしょうか。

 全国連合小学校長会では、前年度まで35人以下学級を実施していなかった地域から122校を任意に抽出し、校長、小学校1年生の担任教員、同クラスの保護者を対象としたアンケート結果を公表しています。

 「2年生以上に35人以下学級を進める必要があると思うか」を保護者に聞いたところ「そう思う」が71.9%、「どちらかというとそう思う」が23.7%で、圧倒的に支持されていることが分かります(グラフ4)

グラフ4 今後、2年生以上の35人以下学級を進める必要があると思うか

 また、効果について、「先生がきめ細やかに対応」や「子どもがクラスに馴染む」では、いずれも「感じる」との回答が9割を超え、保護者が十分に少人数教育の成果を感じていることが見てとれます(グラフ4)

 担任に学級運営について聞いた結果、「一人ひとりに目が行き届く」では、「効果が顕著」が70・4%、「一定の効果がある」が28.4%で、効果はないと答えた人はいませんでした。

 「クラスのまとまり感が向上」では、「効果があった」は、96.6%と、保護者の評価と同様の結果が出ています。

 教育先進国といわれるフィンランドなどが実施し、その効果が注目されている少人数教育。35人以下学級の推進・拡大は、その具体的な第一歩として期待していいようです。

グラフ5 小学生1年生の35人以下学級の効果 小学生1年生の35人以下学級実施による学級経営面の効果について
出典: グラフ
小学校1年生の35人学級実施に係る教育効果等アンケート
(平成23年8月 全国連合小学校長会)
保護者・担任の声
「子ども応援便り」編集室に寄せられたハガキやメールより抜粋

3.日本の教員はなぜ多忙?

 2014年6月、OECDは、中学校の学習環境と教員の勤務環境にフォーカスした調査「TALIS2013」の結果を公表しました。

 この調査は、教員の環境、学校での指導状況などについて国際比較可能なデータを収集し、教育に関する分析や教育政策の検討に資することを目的としています。第一回調査は2008年に実施され、二回目に当たる今回、日本も初参加しました。対象は中学校の校長及び教員で、一カ国につき200校、一校につき教員20名を抽出。日本からは全国192校が(校長192名、教員3521名)参加しました。

 調査結果から得られた日本の教員の主な特徴としては、「勤務時間の長さ」が挙げられます。一週間あたりの勤務時間は、参加国平均の38.3時間に対して、日本では53.9時間と、参加国で最も長くなっています(グラフ6)

グラフ6 小学生1年生の35人以下学級実施による学級経営面の効果について

 教員の仕事時間の内訳は、「個人で行う授業の計画や準備」「学校運営業務への参画」などの9つの項目で示されています。

 各国とも最も長いのは「授業時間」で、参加国平均19.3時間、日本は17.7時間で大きな差はありませんが、授業以外の業務になると、日本の教員がことごとく平均時間を上回っています。

 特に、「課外活動」と「事務業務」の項目に顕著な違いが見られます。「課外活動」は参加国平均の2.1時間に対し、日本は7.7時間。「事務業務」については、平均2.9時間に対し、日本は5.5時間となっています。さらに、個人で行う授業の準備や同僚との共同作業に使う時間も他の国に比べ長いことがわかりました(グラフ7)

グラフ7 1週間あたりの勤務時間の内訳

 今回のTALIS調査では、日本の教員の勤務時間が34カ国中一番長くなっていますが、その中身を見ていくと、日本の教員が他の国に比べ、生徒指導なども含め、いかに幅広い職務を行っているかが分かります。

 たとえば、課外活動に関して、中学校教員の大部分が部活動に従事しており、平均的な一週間において約8時間を費やしています。諸外国に比べ、日本では、とりわけ社会的に恵まれていない子どもたちに対する良い教育成果が見られますが、その理由の一つは、こうした教員の職務の幅広さにあると思います。

 世界中の教育に関するデータを分析し、各国の政策責任者と日々やり取りする中で得られた私の持論は、「国の教育システムの質はその国の教員の質を超えない」ということです。しかし、教員の質は、学校の体制、教員への支援、制度が規定する教員の裁量の質を超えません。

 一方、「教職が社会的に高く評価されていると思う」と回答した日本の教員の割合は28%となっています。

 日本の教員の頑張りがより広く保護者や市民に理解されれば、教員自らが仕事への評価を実感することで、この割合は増えるでしょう。そうなることで、今以上に日本の教育は良くなっていくだろうと期待しています。

TALIS調査を受けて、多忙な先生方へのエールが届いています。

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