経済格差と教育格差の関係が明らかになってきている今、「子ども応援便り」では、格差の根源にあるテーマとして子どもの貧困問題を取り上げ、特集します。
|
● | 塾に通ったり、ピアノや剣道などの習い事にお金(時間を含め)をかけることのできる生徒がいる一方、制服、通学靴など最低限のものさえ購入が難しい生徒もいる。(鳥取県 中学校) |
● | 経済的状況により進学を断念し、やる気をなくしている生徒がいる。(大分県 高等学校) |
● | 体操着を1着しかそろえられない家庭があり、1週間同じ服を着ている。においがしたり汚れたりしているので、そこからいじめに発展することもある。(千葉県 小学校) |
● | 保護者が夜遅くまで働かなければならず、子どもの生活をしっかり見られない。子どもが心理的な不安から学習に集中できない。(三重県 小学校) |
|
これまでの日本では、貧困というのは途上国の話で、「子どもの貧困」が日本に存在しているという認識がほとんどされてきませんでした。 「給食費が払えない」「修学旅行費が払えない」など、最近よく聞かれるこれらの問題は、実は貧困の話でもあるのです。日本の子どもの貧困問題は、実は1980年代からすでにはじまっていましたが、政府は今までなにも対策をしないできてしまったのです。 保護者の経済格差が教育格差に影響しているという統計も発表されました。世代間における連鎖の問題もそうですが、子どもの貧困問題は、社会問題の解決の糸口であるともいわれています。実際に、諸外国では政策の効果もまとめられています。 具体的にはどんな対策が必要でしょうか? 実際のところ、貧困問題の解決には、今すぐ対応すること、長期的なスパンで考えていくことなど、さまざまなメニューが必要です。現金支給、現物支給、制度変更など。でも第一歩は、まず今の現状を知り、一人ひとりが声をあげていくことです。 たとえば言葉ひとつにしても、「少子化対策」というのは将来の労働力として子どもを数でとらえている背景を感じさせますね。 大切なことは、幸せな子どもを増やすことのはずです。真の「子ども対策」として考え、一人ひとりが声をあげれば、政府も社会も変わっていくものだと思いますよ。 |
取材協力 国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部第2室長 阿部 彩さん マサチューセッツ工科大学卒業、タフツ大学フレッチャー法律外交大学院修士号・博士号取得。国際連合、海外経済協力基金を経て、1999年より現職。研究テーマは、貧困、社会的排除、社会保障、公的扶助。著書に『子どもの貧困―日本の不公平を考える』など (写真右) |