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結果よりも、好きなことを追いかけ続けることが大事
アンジェラ・アキさん (シンガーソングライター)
小学校高学年のころ。デビュー曲『HOME』には、生まれ育った故郷への想いを込めた
アンジェラ・アキ
1977年9月15日、徳島県生まれ。父は日本人、母はイタリア系アメリカ人。高校からアメリカで過ごし、03年に帰国。05年にメジャーデビュー。初アルバム『Home』は60万枚を超えるロングセラーを記録。

子ども応援便り編集室に寄せられた読者の声で、「次号に取り上げてほしい憧れの人」として人気が高かったアンジェラ・アキさん。子ども時代のことや、昨年の「NHK全国学校音楽コンクール 中学生の部」の課題曲としてアンジェラさんが書き下ろした「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」にまつわるエピソードをうかがいました。


――音楽や歌は小さい頃から好きだったのですか?

 小学校時代を過ごしたのは、徳島県です。テレビも2チャンネルしか映らないほどの山奥で、近所の人たちは外国人を見たこともない。そんな環境の中で、アメリカ人の母と日本人の父の間に生まれた私は、なんとなく「自分は人とは違うんだ」という疎外感を持っていました。そんな私をいつも励ましてくれたのが、「おばあちゃん」の存在でした。ご飯を作っている時にも、いつも歌を口ずさんでいるような陽気な祖母でしたが、その影響は大きいと思います。ピアノは3歳から習っていましたが、ほんとうに音楽に目覚めたのは、中学校時代です。

――なにかきっかけがあったのですか?

 岡山県にいた15歳の頃が、「自分の居場所がどこにもない」という気持ちのピークでした。思春期で反抗期ということもあって、母親のことは大好きなのに、自分が人と違う原因は母親にあると思うと複雑な気持ちでした。その頃、友だちに「ピアノの上手なアキちゃん」と呼ばれるようになったのが嬉しくて、すごく心強くて。「ハーフのアキちゃん」ではなく、やっと自分の居場所を見つけた気がしました。ピアノが私のアイデンティティーになったのです。
 その後、ハワイに引っ越したのですが、私はハーフの顔をしているのに、当時は英語がほとんどしゃべれない。そんな時も、ピアノという万国共通の言葉が助けてくれました。

――2008年のNHK合唱コンクール・中学生の部の課題曲になった「手紙」は、アンジェラさんご自身のエピソードが題材になっているそうですね。

 はい。実際に自分が手紙を書いたのは17歳の時。アメリカの高校生だった頃です。親にも言えない、友達にも話せないことを未来の自分に相談にのってもらおうと、30歳の自分あてに書いたんですね。自分では、その手紙の存在をすっかり忘れていたのですが、合唱コンクールの作曲のお話をいただいて、「中学生にどんな歌詞を?」と考えていた時に30歳の誕生日を迎え、母がその手紙を送ってきてくれたのです。

――不思議な偶然が重なったんですね。

 10代の自分からの手紙を読んでみると、「なんでこんなことで悩んでいるの?」と、切なくなって。もしあの時の自分に何か言えるなら、何と言ってあげるだろうと思って、ピアノに向かっているうちに生まれたのが「手紙」の歌詞でした。

――歌詞は、1番が大人の自分へ、2番が10代の自分へ返事という構成ですね。

 10代の子どもたちが歌うということで、できるだけ同じ目線にたって歌詞を書きたいと思いました。ただ、子どもと目線を合わせるってなかなか難しい。でも、昔の自分からの手紙が届いたとき、「時は越えても同じ自分だったら、同じ目線に立てる」と気づきました。15歳の「僕」を主人公にすることで、中学生たちは、それぞれ自分を投影しながら歌うことができるのではないかと思ったのです。

――実際に全国のたくさんの中学校をまわって、どんな印象を持ちましたか?

 いつの時代も、子どもたちはみんなまっすぐです。例えば、友達が優しくしてくれるとその優しさを100%「嬉しい!」って受けとめる。家に帰って裏サイトで自分が悪口を言われているのに気付くと、100%落ち込む。ピュアだからこそ、浮き沈みが激しいんですよね。人生の免疫がまだないから、心の風邪はひきやすいし、心のすり傷がたくさんある。でもそのピュアな姿っていいなぁ、素敵だなって思いました。自分が忘れていたものを思い出しました。

――訪れた中学校で、「未来の自分に手紙を書こう」という試みをしたそうですね。

 子どもたちが書いた手紙に共通しているのは、悩んでいるのが自分だけだと思っている点。振り返ると、10代の私も「どうして私だけ、人に言えないような悩みを抱えているんだろう」と思っていました。それで、はっとしたんです。それが孤独を生んで、孤独の連鎖みたいになってしまっていると。
 「手紙」には、「15の僕には誰にも話せない悩みの種があるのです」という歌詞があります。その部分をみんなで歌う時、「もしかしたら隣で歌っている子も、なにか言えない悩みがあるのかな」、「もしかしたら先生も、親もそうかな」と思い、ひとりじゃないことに気がついてもらえれば、と。

――歌詞では、「Keep on believing」という言葉も印象的です。

 私は、「あきらめない」ことよりも、“ing”、“〜し続ける”ということの方が大切だと思っています。
 私は18歳で歌手になることを決めてから、10年間デビューできませんでした。よく、「10年もあきらめずに、すごいね」と言われますが、何度も挫折して、音楽自体を投げ出したこともありました。途中でbelieveできなくなっても、時間がたってまたできるようになったら、それは続いているということ。そんな考えが、私にとっての支えでした。もしすぐにデビューできたら、この「Keep on believing」という言葉にたどりつくことはなかったかもしれません。“ ing”をつけたのには、たどりついてもその先があるし、たどりつけなくても終わりじゃない、”〜し続ける”ことが大切、という想いをこめています。

――最後に、子どもたちに応援メッセージをお願いします。

 勇気づけるような言葉をかけてあげたいと思うけれど、大人になっても苦しいこと、悲しいこと、辛いことはなくならない。例えば中学生が、今苦しみを乗り越えれば高校からは大丈夫かというと、残念ながらそうじゃない。また、別の悩みに出合う。でも、その痛みや苦しみを振り返った時に、「あの出来事には、こんな意味があったんだ」と思える日が必ず来ます。それに、痛みや苦しみを抱えているのはあなただけじゃないから大丈夫。ひとりじゃないですよ。


★アンジェラ・アキさんの オフィシャルウエブサイト : http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AngelaAki/

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