• 教育を語る
    リストにもどる

  • トップページにもどる
■子どもは親の鏡、
  •  社会の鏡
  • シンガーソングライター
    美輪明宏さん
写真:美輪明宏さん
美輪明宏
1935年5月15日、長崎県生まれ。シンガーソングライター。国立音大付属高校中退後、16歳でプロ歌手としてデビューし、57年「メケメケ」、66年「ヨイトマケの唄」が大ヒットした。97年『双頭の鷲』で読売演劇大賞優秀賞を受賞したり、『オーラの泉』をはじめ多くのテレビ番組も出演し、俳優、タレントとしても幅広く活躍中。第63回『紅白歌合戦』では「ヨイトマケの唄」を熱唱し、老若男女問わず多くの反響を呼んだ。

――今の子どもたちを見て
   率直な感想を。


 最近、日本も捨てたものじゃないなと思っています。
とくにスポーツ界で顕著ですが、礼儀正しく、言葉遣いもきちんとした、すてきな若者がたくさん活躍していますよね。たとえば、フィギュアスケートの浅田真央さんやゴルフの石川遼さんなど対戦相手の悪口は決して言いません。世界のトップレベルの技術力がありながらうぬぼれることなく、とても謙虚です。それは、そんな子どもたちを育てている父母、周りの大人がいるということです。
 人々は「まとも」なものを求め、支持していると実感しています。

――そんな中、昨年の「紅白歌合戦」で美輪さんが歌った「ヨイトマケの歌」が子どもにも大人気でした。

 ええ。中学生、高校生がネット上に書き込んでくれたメッセージには、「母ちゃん今までごめんね、親孝行するからね」というものもありましたよ。
 あの舞台では「いじめっ子の醜さ」も伝えたくて、いじめっ子のセリフ部分で思いっきりいじわるで嫌らしい表情をしてみせました。
 

――まさに今の課題です。
「いじめ問題」解決のために大人ができることは?


 「いじめる行為」の「かっこ悪さ」を、子どもたちにしっかり教えることです。
「いじめ問題」の大もととして、子どもたちが、いじめる側に、元気でかっこいい印象を持ってしまっている点があげられます。大人でも他人をいじめる人はそういう価値観を持っています。テレビ番組でも出演者に恥をかかせたり、恐怖心を与え周囲が笑ったりする内容のものが多いでしょ。子どものうちに「いじめる連中の価値観は最低だ」と教えるべきです。
 実際に、いじめっ子は劣等感の塊です。それを隠そうとしておとなしい子をいじめる傾向があります。いじめる行為は、世界中に「私は人をねたみ、そねみ、ひがむ、醜い心の持ち主です」と宣言しているのと同じなのです。教職員や保護者は、それをことあるごとに伝え、子どもたちがいじめの現場で、「あなた最低の人間ね」と言えるようにするのです。

――具体的に、どのように伝えればいいのでしょう?

 子どもたちが興味を持つような工夫も大事です。昔は、童話や童謡の中のエピソードを、折に触れて例え話として紹介しながら価値観を伝えたものです。
 一方で、人を思いやる心そのものである「想像力」を育むことも大切です。良質の詩や俳句、音楽、絵画などの作品に触れ、自ら創造する時間、つまり芸術系の時間をもっと増やすことが必要だと思います。道徳教育を充実させればいいという意見もありますが、はじめから「道」とか「徳」などといかめしく、上から目線で「ねばならぬ」と語るのでは魅力がありません。子どもたちはそっぽ向いてしまいます。子どもたち自らが、「あっ、かっこいい! 身につけたい!」と思うようにするには、たとえば「マナー」という概念から入るのもいいと思うのです。
 「かっこいい大人」になるという前向きな目標に向けて、基本的な礼儀を教え、そのベースにある他人を思いやり、尊重する精神を自然に分かるように伝えていく。そうすれば、グローバル社会に通用する洗練された大人を増やすことにもつながります。

――保護者の姿勢も問われますね。

まずは言葉遣いを見直すことです。親子でも、「ため口」はよくありません。近ごろは、敬語や礼儀作法を守るのが面倒になって、「フレンドリー」などという言葉ですり替えています。「真のフレンドリー」とは、節度を保ちながら愛情を持って接するということです。「なれ合い」が「親しい」ことだと思うのは錯覚です。
 最近、「キレる子ども」が話題になっていますが、親が子どもを叱る時、「○○さん。こういうことしては困りますよ。直してくださいね」とていねいな言葉で諭すと、話しながら自分も少し冷静になれます。そうすると、子どもも「私は人格を認められている」と感じ、あまり無茶や乱暴もできなくなるものです。
 子どもたちの問題、学校の問題とされていることは、実は大人の問題なのです。「子どもは親の鏡、社会の鏡」なのですから。


このページのトップへ
Copyright(c)2006 子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会