竹下景子 1953年、愛知県名古屋市生まれ。NHK『波の塔』でデビュー。『北の国から』『坂の上の雲』『ゲゲゲの女房』、3度マドンナ役を演じた『男はつらいよ』など幅広く活躍。『クイズダービー』では「3択の女王」と呼ばれた。「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」ワクチン大使なども務める。映画『レオニー』が11月20日から全国ロードショー。 |
――どのような子ども時代を送られましたか?
生まれたのは名古屋ですが、父の仕事の都合で東京の東村山で10歳まで過ごしました。小児ぜんそくだったため、母から「かけっこはしちゃだめ」「暗くなる前に帰ってきなさい」というように行動を制限されていました。友だちと同じようにしていられないことがコンプレックスでしたね。
――性格は外交的というよりは内向的…?
典型的な内弁慶。ただ、その頃に本に親しんだことが大きな財産になっています。岩波少年文庫や漫画と、たくさんの本を読みました。そのうちに演じることも好きになって。クラスのお誕生日会で、母が作ってくれた指人形で劇を演じたりしました。新聞紙を水でふやかしてのりで固めた動物の指人形です。アドリブも得意でした(笑)。
――その後、高校時代にNHK『中学生群像』の生徒役を演じてらっしゃいます。
名古屋の中高一貫の女子高では演劇部でした。『中学生群像』はもうひとつの共学の学校のようでした。
――出演された番組は竹下さんの成長の過程でもあるわけですね。
『北の国から』では家族について深く学びました。時代が変わっても家族のつながりの大切さは変わらないし、人が感じる幸せも変わらない…。脚本の倉本聰先生とは家族ぐるみのお付き合いが続いています。倉本先生主催の「富良野自然塾」のお手伝いを2人の息子とともにしています。子どもは自然の中で過ごすことで大きく成長します。楽しいことも、危ないことも、自分の体で学んでいきます。
――子育てと仕事の両立は大変だったのでは?
子どもはふたりとも住んでいる地域の公立小学校に通いました。長男が1年生のとき上履きに履き替えるのに手間取っていたらしく、先生から「お母さん、家で教えてください」なんて言われたことも(笑)。そんなふうに学校や地域のみなさんに子どもたちをしっかり見守ってもらえたことに、とても感謝しています。
――最近の子どもを取り巻く環境をどのようにご覧になっていますか?
保護者も先生も疲れているように見えます。お母さん方からよくされる質問があります。「読み聞かせをしようとすると子どもがいやがるのだけど、どうすればいいですか」と。子どもにも気分がありますからいやがる時があって当然です。こうすればいいというマニュアルは、読み聞かせにも、子育て全般にもないことに気付いてほしい。
私も子育てに自信をなくしたことが何度もあります。途方に暮れ、子どもと一緒に泣いてしまったことも…。でも、今振り返ると、それが私にとって何ものにも代えがたい宝物になっています。本当は悩みつつ楽しんでいたのだとも思います。
――ワクチン大使や国連WFP協会(国連世界食糧計画)顧問などの活動もされています。
私が子どもの頃の給食に出ていた脱脂粉乳が国連からの援助だったことを知って、なにか恩返しができればと思ったのがきっかけです。健康と栄養は子どものエネルギーを生かすために何よりも大切ですから。
――保護者や先生にメッセージをいただけますか。
親子で一緒に遊んでほしいし、先生には子どもと一緒に楽しめる授業の工夫をしてほしい。それには、家族や地域の協力が必要です。特にお母さんに伝えたい。子どもの成長は早いものです。悩むことも多いかもしれませんが、今しかない、子育ての時間を精一杯楽しんで!