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■国のしっかりした予算組みで、
  • ゆきとどいた教育環境を実現
  • フィンランドの小学校教師
    リッカ・ヘレナ・パッカラさん
写真:リッカ・ヘレナ・パッカラさん
リッカ・ヘレナ・パッカラ
1969年フィンランド生まれ。トゥルク大学で教育学の修士学位取得、ヘルシンキ大学で行動科学・特別教育の学位取得。1995年〜2005年、フィンランド国内の小学校で教べんをとる。その後、夫の転勤で東京に在住。
フィンランドの教育支出は先進国の中でも最高水準!
国内総生産(GDP)に占める教育支出の割合
日本の教育支出は国内総生産(GDP)の3.5%にとどまっており、OECD諸国の中で最低水準になっています。
写真:リッカ・ヘレナ・パッカラさん

――フィンランドは、教育先進国と呼ばれ、今、教育界から注目されています。

 もともと、フィンランド人には、環境的に「教育は大事」との認識があります。自然資源が少なく、輸入に頼らざるを得ない国なので、母語だけでは十分だとは言えないのです。
 だから、言語学習の時間が多く、高校生になると4ヶ国語ぐらい話せるというのが普通です。
 
――経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)でも好成績をあげています。

 90年代に不況に陥り、失業率が20%に達した際、29歳の若さで就任したヘイノネン教育大臣が、大胆な教育改革に踏み切りました。
 彼は、「教育改革をしない限り、フィンランドに明日はない」と言い切り、「教育は人という資源への投資」という考えのもと、改革を進めました。そのことが学力向上に大きく貢献したと思います。

――具体的に、教育改革の前と後で変わったことは何ですか。

 「教育現場への裁量権」が認められ、オーダーメード型の教育ができるようになりました。担任の教師が自由に時間割や教える内容を決められるのです。子どもたちの力を引き出すにはどうすればいいか、自ら知恵をしぼることによって、ユニークで工夫を凝らした授業が生まれます。授業が面白くて、学校が楽しい。楽しく勉強すると、どんどん身につく。そんな好循環が生まれています。
 フィンランドでは、教師は大人気の職種です。子どもたちにも、授業で自分の世界を作ることができる教師という仕事が魅力的に映っているのでしょう。

――地域間の学力格差もほとんどないと聞きます。

 教育費の予算組みがしっかりしていることが、格差のない教育を実現させる大きな力になっています。幼稚園から大学院まで、教育費は無料。教材費や給食費もかかりません。
 また、自治体でも、個々の学校の状況を考慮して、柔軟に対応できる予算組みが実行されています。例えば、ヘルシンキ市東地域は、住民に移民や異宗教の人が多いのですが、市は、その地域の学校により多くの予算を投入して、教職員の数を増やし、異宗教の授業も用意しました。

――教育現場の環境という面では、いかがですか。

 大きいのは、担任教師を助けるための「サポーティングシステム」の存在です。問題に直面した際、いろいろな意見を聞くことができ、不安や責任を一人で負わなくていいシステムです。学内外の専門家も参加し、精神的にも支えます。
 また、ひとクラスの人数も30人以下で、日本より少ない。個人的には、ひとクラスの理想の人数は、25人以下だと思います。低学年だと、学校への慣れなどの個人差も激しいので、20人がベスト。子どもを丁寧に見るには、やはり多人数では限界があります。

――日本の学校や教育で、いいなと思うところは?

 朝、横断歩道付近で旗を持って登校中の子どもたちを見守る保護者の姿には感動しました。学校行事を支援する保護者も多いと聞きますが、それも素晴らしい。先生一人だけで大勢の子どもを見るのは大変ですから。

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