新型コロナウイルスの影響下、
子どもたちと関わるおとなにできること

 新型コロナウイルスの感染拡大により、子どもたちの生活や教育環境も激変しています。また、コロナ禍に各地の豪雨災害なども重なり、慣れない生活で大きなストレスがかかっていることと思います。そんな中、『子ども応援便り』編集部にも、保護者や教職員、子どもたちからから様々な声が寄せられています。

 今、子どもたちのどのような変化に気をつけ、子どもたちのために何ができるのか。子どもたち自身はこの状況にどう向き合えばよいのか。編集部では、寄せられた声や相談内容をもとに、子どもたちの心のケアに詳しい各分野の専門家の方々に、お話をうかがったり、関連情報をまとめたりしました。順次紹介していきます。

2020年4月16日公開
7月17日最終更新

コンテンツ充実のためのクラウドファンディングはおかげさまで、目標金額を達成することができました!ご支援いただいたみなさま、本当にありがとうございます!いただいたご支援を基に、コンテンツの充実を図ってまいります。(2020年9月7日)

ストレスマネジメント実践例

出所:社会応援ネットワーク「がっこう応援便り」「Q&A方式で学ぶ震災と心のケア」

 災害発生時や予期せぬ事態が起こった時、その心理的ストレスは想像以上に大きなものであり、ストレスへの適切な対応が必要とされます。コロナ禍に加え、各地の豪雨災害によって、慣れない避難生活を送られている方も数多くいらっしゃることと思います。

 当編集部の有志メンバーで活動しております「社会応援ネットワーク」が過去に制作した、災害後の心のケア、ストレスマネジメントに関する内容のうち、自宅などでもすぐに実践できるコンテンツを再編集して掲載いたします。

Q&A

※それぞれの質問の冒頭に以下のアイコンで主に対象となる読者の目安を示しました。
:保護者向け :教職員向け :子ども向け


部活動

監修者:田中ウルヴェ 京(五輪メダリスト・メンタルトレーニング指導士)

休校になっても、自宅でコツコツトレーニングしていた息子でしたが、所属している部活の大会がなくなったことで、すっかりやる気をなくしてしまい、ゲームばかりやっています。こんな時、親としてどんな声をかけてあげたらよいのでしょうか?

 息子さんの部活の大会がなくなってしまったこと、そのこと自体は、本当に息子さんにとって残念なことだとお察しします。特に、休校になってもトレーニングしていた、ということは、おそらく、息子さんがどんな逆境にも立ち向かって頑張ろうとしていたからであろうとも思います。その頑張る最大の目的であった「大会」がなくなったわけですから、やる気という心のエネルギーを発する意味がなくなったと感じたのでしょう。息子さんのやる気がなくなるのは、当然のことだと思います。

 さて、ここでもし私が息子さんの母親という立場であれば、興味があるのは、「やる気がなくなった」という心理状態と「ゲームばかりをやる」という行動の関係性です。極端な言い方ですが、もしも本当に“やる気がなくなった”のであれば、「何も手につかない」という放心状態になることも可能なわけですが、そうではないということです。息子さんはなぜ“ゲームばかり”をできるのか。これは皮肉で言っているのではありません、笑。もしかすると、「自分の溢れるエネルギーの出しどころを失った」という状態であるとも考えられます。要するに、これまで必死に部活に費やしてきた時間、想いをどうしていいのかわからない……のかもしれません。

 もしもそうであれば、それこそ、正解などありません。私であれば、真剣に彼に向き合い、「この今の我々の状態は人生の危機だ。どのようにこの危機を捉えて、どう生きていくと我々が選択をするべきなのか考える時間を天が与えてくれたと考えてはどうだろうか」と真剣に聞くと思います。息子さんがもしも部活を真剣にやっておられたのであれば、親としてのこちらも真剣に、と思うからです。

 大事なことは、息子さんが今、何を感じ、何を考えていて、今後どうしたいと思っているのかです。この機会に、なぜその部活動を始めたのか、部活の魅力は何か、大会がなくなったことをどのように捉えているのか、など、息子さんから「教えてもらい」、お子さんと一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

コロナウイルス感染拡大で、不安になり「団体競技は(怖いから)もうやめようかな」 と言い出す子がいます。競技経験がない中で顧問になったので、競技の魅力を語ることもで きないし、子どもたちになんと声をかけてよいか分かりません。

 子どもによって、部活動を始めた理由も続ける理由も様々でしょう。そして、やめようかな、という理由も様々です。「やめようかな」という言葉の背景に、子どもたちのどんな気持ちが隠れているのかを想像してみたいものです。

 コロナ禍はきっかけの一つで、「団体競技をやめて、他の競技をやってみたい」と思っているのかもしれませんし、「本当は続けたいけど、コロナが怖い」「どうしたら良いのか分からない」といった不安が背景にあるのかもしれません。

 おとなにできるのは、子どもたちが本当の気持ちを話せる環境づくり、つまり聞くことです。「どんなことを不安に感じているのか教えて?」「どうしてやめようと思ったの?」などと声をかけて、子どもたちが自らの気持ちを整理し、次の行動を起こせるようにサポートしてあげてください。

目標にしていた部活動の大会の予選が中止になってしまって、今まで何のために練習してきたのか、という気持ちになっています。この気持ちのままだと、勉強にも身が入りません。どうしたら気持ちが切り替えられますか。

 めざしていた大会がなくなってしまったことは本当に残念でしたね。「今まで何のために練習してきたのか」という言葉の経緯を想像すると、おそらく一生懸命練習を続けてきたのだと思います。「今までの時間は何のためだったのか」と思えるということはそれだけ「時間を費やした」という想いがあるからでしょう。それだけあなたは「何かに没頭できた」ということでもあります。なので、私にとっては、次の言葉があなたから出ることに少し疑問を感じます。「この気持ちのままだと勉強にも身が入りません」という言葉の意味があまりよくわかりません。おそらく、もっと違う悩みがあなたにあるように感じます。そもそも、「気持ち」というものはそんな簡単に「切り替えたり」できるものではありません。とくにあなたが一生懸命部活に頑張っていたのであれば、なおさらです。

 まずは自分が感じていることをありのままに言葉にしてみましょう。うまく言葉にできない人は、「いま、私は本当はなにを考えている?」「本当は何かに怒っている? 許せないと思っている?それとも悔しい?悲しい?」と自問してみてください。そして本当の気持ちが出てきたら、「それはなぜ?」と「自分へインタビュー」をするつもりでとりくんでみてください。「なぜ」と掘り下げていくことで、今の本音とその理由が見えてくるはずです。本当の「悩み」をしっかり自分で知ることができると、そこから解決方法を見いだしていくことが可能です。

監修者
【部活動】

田中ウルヴェ 京(たなかウルヴェ・みやこ)

五輪メダリスト/メンタルトレーニング指導士

1967年東京生まれ。1988年ソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダル獲得。日・米・仏のシンクロ代表チームコーチを10年間歴任。91年渡米し、米国大学院で修士号取得(専門はスポーツ心理)。日本スポーツ心理学会認定メンタルトレーニング上級指導士。トップアスリートからビジネスパーソンなど幅広くメンタルトレーニングを指導。2017年IOC国際オリンピック委員会マーケティング委員に就任。スポーツ庁スポーツ審議会委員。報道番組レギュラーコメンテーターを多数務めている。フランス人の夫と一男一女の母。

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生活リズムの変化

監修者:冨永良喜(兵庫県立大学教授、臨床心理士)、副島賢和(昭和大学准教授、学校心理士スーパーバイザー)

学校に行かなくなってから、子どもの落ち着きがなくなってきました。夜もあまり眠れていないようです。どのように接したら良いでしょうか。

 人は、危機が迫ると、心拍を早めて立ち向かおうとします。それがイライラや落ち着きのなさ、眠りを妨げてしまっています。「毎日、コロナウイルスのニュースで心配だよね、こんなときは誰でも、心と体が不安定な状態になることがあるんだよ。全力をあげて立ち向かおうとしているんだよ」と話してあげましょう。気持ちを落ち着ける呼吸法や一度身体に力をいれてから、一気に力をぬくリラックス法など、親子でリラックス法を練習するのもいいでしょう。

仕事をどうしても休めないので、子どもを家において出かけざるをえず不安です。親の留守中、子どもだけで過ごしてもらうポイントはありますか?

 一人で留守番をするのは、子どもにとっても不安なことです。保護者の不安は、子どもにも伝わりますから、まずは保護者自身が安全・安心でいられるように、という視点を持つことが大切です。

 子どもと一緒に留守番中の一日のスケジュールを立てて、その日にすることを決めておくといいでしょう。「お父さん(お母さん)が出かけたら朝ごはんで使ったお皿洗いをする」など、ルーティンを決めておくと、留守番のモードに入りやすくなるかもしれません。体を動かすことや家庭での役割も入れるといいでしょう。子ども自身が考えることが大事です。

 留守番中に来客や配達、電話などがあった時、どのように対応をするかを予め決めておくことも必要です。「来客や電話にはすべて出ない」「インターフォンは知っている人の時だけ対応する」など、無理なくできて、保護者も子どもも安心できる方法を子どもと相談しながら決めてみてください。

 いざという時の連絡の取り方も決め、練習しておくといいでしょう。「毎日●時にお母さん(お父さん)に電話する」とルーティンに組み込んでおくなどもいいかもしれません。

 保護者が留守の間、子どもはとても頑張っています。子どもが好きなお菓子などをおやつに用意しておいて、留守番の楽しみをつくってあげることもポイントです。そして、帰宅したら、「ひとりで留守番できて偉かったね」「家のことをやってくれて助かったよ。ありがとう」などと子どもの頑張りを認めて感謝し、その日の子どもの話を聞いてあげてください。

学校に行かないので生活リズムが乱れてきてしまいました。どうすれば良いでしょうか。

 日課や習慣的な作業がなくなると、体内時計が乱れ、不眠や食欲低下などの心身の症状が出てきます。起床時刻・就寝時刻を決めるなど、できるだけ普段どおりの生活リズムを維持するために、子どもと一緒に一日のスケジュール表を作ってみてください。その際は、まずは子どもが考えている一日のスケジュールを書いてもらうといいでしょう。

 小学生高学年くらいからは、1日の過ごし方をイメージトレーニングするのも効果的です。「一日、一週間をこんな風に過ごしたいというイメージはあるかな?」、「もっとも勉強に集中している自分を映画館のスクリーンのようなものに思い浮かべてごらん」、「集中している自分を10としたら、この1週間の自分は何点くらいだった? 点をあげるために、変えたいことを3つリストアップしてごらん」などと問いかけてみてください。「10時には寝て、朝6時半に起きる」「ゲームはタイマーをセットして1時間でやめる」など、子ども自身からリズムを整えるアイデアが出てくると思います。

子どもに外で遊びたいと言われました。外遊びはさせてよいですか?

 運動機会の確保のためにも、日常的な運動(ジョギング、散歩、縄跳びなど)は推奨されています。外遊びは、「3密」※のうち、密閉はクリアしていますので、密集、密接にならないような遊びならいいよとアドバイスしてあげてもいいでしょう。感染対策に必要な距離(=ソーシャル・ディスタンス)は、2m以上と言われていましたが、最近の情報では、最大4m離れた空気中にウイルスが飛散するとする研究も出ています。

 また、外遊びをした後は石けんで手を洗うようにしましょう。小さな子どもの場合は、動画を見たり、歌を歌ったりしながら手洗いするとよいでしょう。事前に子どもと一緒に練習してみてください。

※新型コロナウイルス感染症の影響を考えたときに避けるべき場所。@換気が悪い、密閉されている、A人が密集している、B近距離で、会話や発声が行われる。

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子どもの不安への対応

監修者:冨永良喜(兵庫県立大学教授、臨床心理士)、副島賢和(昭和大学准教授、学校心理士スーパーバイザー)

子どもが急に膝に寝転んでくるなど、振るまいが幼くなったように感じます。問題はありませんか?

 子どもは、辛かったり、危機が迫ったりすると、年齢より幼くふるまったり、今までできていたことができなくなることがあります。これは「退行(幼児返り)」と呼ばれる現象で、小さな子どもだけでなく、小学生や中学生でも起こります。

 言葉で「怖いよ」、「不安だよ」などと表現するだけでなく、行動で表したり、「背中が痛い」「肩が痛い」「熱が出る」などの身体症状が出たりすることもあります。子どもたちからのそうした声は、安心したいというサインです。そんな時は、「お母さん(お父さん)と一緒だと安心だよね」「ひとりになるのがいやだよね、トイレについていってあげるから大丈夫だよ」と安心させてあげたり、「なんかちょっと元気ないわねえ」「疲れちゃった?」「ちょっと寂しいのかな?」などと声をかけたりしてみてください。

 大事なのは、子どもたちの行動や言動を認め、「あなたの変化や感情に気がついているよ」というメッセージを言葉や態度で伝えてあげることです。

子どもが「コロナにかかると死んじゃうの?」と不安がっています。また、毎日、感染者数増加や医療従事者などの家族が差別されたなどのニュースを見て、私自身も不安です。子どもに新型コロナウイルスについてどのように伝えればよいでしょうか。

 (1)コロナウイルスについて知る、(2)効果的なコロナウイルスへの対処法について知る、(3)免疫力・抵抗力を高める日常生活の過ごし方を知り、実践することがポイントです。専門家や専門機関がまとめた信頼のおける資料などを子どもと一緒に見ながら話してみるといいでしょう。

 例えば、「石けんで手洗いするとウイルスが壊れるんだよ」と話してあげて、ウイルスが体に入ってこない方法があることを教えてあげるとよいでしょう。また、「ウイルスが入ってきても、身体にはウイルスと戦う戦士ががんばるんだよ。それを抵抗力(免疫力)といって、睡眠、栄養、運動、規則正しい生活が抵抗力(免疫力)を高めるんだよ」と話し、「早寝・早起き」や「食事」がウイルスに立ち向かう体と心を作っていくことを知ってもらうのも大切です。

【参考】
監修者
【生活リズムの変化】【子どもの不安への対応】

冨永良喜(とみなが・よしき)

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科教授。兵庫教育大学教授を経て、現職。博士(心理学)。元日本ストレスマネジメント学会理事長。専門は災害臨床心理学。阪神・淡路大震災、四川大地震、東日本大震災などで被災地の心のサポートに入った経験から、学校において、心の健康授業の普及をめざす。

副島賢和(そえじま・まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学病院内学級担当。25年間公立小学校教員として勤務。2006年、昭和大学病院内「さいかち学級」(品川区立清水台小学校 病弱・身体虚弱児特別支援学級)担任となる。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタル・クラウンとしても活動。ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ/2009年)のモチーフ。「プロフェッショナル仕事の流儀」出演(NHK/2011年)。2014年より現職。

YouTubeにて、「お家にいる子どもたちとのかかわり」についての連載動画が公開中!
「風のたより〜病弱教育の視点がコロナによるこの状況のお役に立てるかも〜」(NPO法人 Your School)

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