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■子どもは、なるべく大勢の中で
  • 育てることが大切だと思います
  • 女優・紺野美沙子さん
写真:紺野美沙子さん
ブータンの子供たちに折鶴を教える紺野さん
ブータンの子供たちに折鶴を教える紺野さん(撮影/篠田伸二)
紺野美沙子
女優、一児の母。テレビ、映画、舞台、著作活動など多方面で活躍。1998年に国連開発計画(UNDP)親善大使に任命され、アジアやアフリカ地域を視察、国際協力の分野でも精力的に活動している。

――小学6年生の息子さんがいらっしゃいますね。子育てで、心がけていらっしゃることがあると聞きましたが。


 ひとりっ子なので、なるべく大勢の人の中で育てたいと思っています。例えば息子には、「どんどん家に友達を呼びなさい」と言ってあるんです。大騒ぎになるので「もういい加減にして!」と思ってしまうこともありますが(笑)、友達がたくさん遊びに来てくれるのはありがたいことだと思うようにしています。
 地域にも、顔見知りの人がたくさんいたほうが安心。一緒に買い物に行って、商店街の床屋のおばちゃんや眼鏡屋のおじちゃんに挨拶させて、顔を覚えてもらえるようにしました。

――学校は、どんな場所であってもらいたいと思いますか。

 学校は塾とは違って、勉強だけではなく、みんなで協力して何かに取り組む経験ができます。授業時間の関係で、修学旅行や運動会などが減っていますが、こういう体験型、参加型の経験はできるだけさせてもらいたいですね。

――保護者として、学校にはどのような教育を求めたいですか。

 「どうして?」「なぜ?」と考え、自分自身で答えを見つけ出す過程や発見の喜びは記憶に残ります。今の教育は、受験のため、進学のための教育になり過ぎている気がします。もっと自分で考える力や「知恵」が身につく教育であってほしい。
 ただ、最近は大人自身がゆとりをなくしてしまっていますよね。「ゆとり教育」と言われていましたが、大人にゆとりがなければ、子どもに対してきめ細かな教育はできません。先生方の負担を軽くする多様な支援も必要だと思います。時間もお金もかかるかもしれませんが、大事なことではないでしょうか。

――国連開発計画親善大使として、世界中の子どもたちと触れ合われていますが。

 一昨年、ベトナムの小学校に行ったときのことです。遠くから先生が歩いてくると、子どもたちはさっと姿勢を正して、大きな声で挨拶をしていました。ベトナムでは、先生は村一番の教養人で、地域の人々に尊敬される存在。子どもたちの近くに尊敬できる大人がいるということは、親にとって安心ですよね。
 また、5年前にブータンを訪問したのですが、思いやりの気持ちをとても大切にする国で、それが教育にも表れていました。たとえば、ひとりが100点をとると、みんなが「おめでとう」と一緒に喜んであげるのです。ただ、競争心がないので、それが課題だそうです(笑)。
 学校と地域の人々が一緒に教育や子育てに取り組むこと。あたりまえのようですが、今の日本にとっては、こうしたことがとても大事なのではないでしょうか。

――紺野さんご自身に影響を与えた先生はいますか。

 小学校5、6年生のときに所属していた演劇クラブの顧問の先生が、とても厳しい方で、「もうやめちゃいなさい!」なんて叱られたこともありました。
 でも、大人になってから、その厳しさは先生の情熱だったことに気づきました。私たちに良いお芝居をさせるために、ものすごいエネルギーをぶつけてくれていたんです。実際にお芝居は先生の指導のおかげで成功しましたし、私が女優を志すきっかけにもなりました。
 熱心さや一生懸命さは、どんな小さな子どもにも伝わるし、記憶に残るもの。先生だけでなく、親や地域、子どもに関わるすべての大人たちが、その気持ちを忘れないことが大切だと思います。
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