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  • ◆みんなでめざそう!「豊かな教育」  2007年冬号Vol.4
  • 「格差社会」という言葉を最近、よく耳にします。
    これに関連し、家庭の経済力の差が子どもの教育に影響する「教育格差」が今、大きな感心を集めています。
    家庭や学校でどんなことが起きているのか、これからの日本の教育がどんな方向に進んでいったらいいのかを考えてみます。
1.保護者も実感している「経済格差=学力格差」
  • (図1)家庭の経済格差が、子どもの学力格差に影響していると思いますか?(図2)現在の所得水準で最終希望進学先への進学が可能とお考えですか?
  •  生まれ育った環境により、受けることができる教育に格差が生じている…。こうした「教育格差」の問題が教育の専門家から語られるようになり、関連する書籍も続々と刊行されています。「日本の教育を考える10人委員会」がこのほど、全国の保護者3000人に実施したアンケート調査においても「家庭の経済格差が、子どもの学力格差に影響していると思う」と答えた家庭が7割以上にのぼっています(図1)
     国税庁の調査では、9年連続して勤労者の給与が減少し、年収200万円以下の人が全体の22.8%と、21年ぶりに1,000万人を超えたといいます。また、年収400万円未満の世帯では、家計に占める教育費の割合が60%にも及んでいます(国民生活金融公庫総合研究所調査)。
     先のアンケート調査では、家計に占める教育費について「かなり負担」(22.2%)、「やや負担」(53.4%)を合わせると、保護者の4人に3人が負担感を感じています。
     さらに、第1子について、「現在の所得水準で最終希望進学先への進学が可能か?」という質問には、「可能」との回答は37.3%、「節約しても難しい」は11.3%にのぼっています。これを年収別にさらに細かく分析したのが(図2)ですが、年収900万円以上でようやく「(節約せずに)可能」は半数以上になります。
     このほか、居住地別では、「節約しても難しい」と答えた保護者が首都圏などの大型都市で7.4%だったのに対して、他の地域では15.2%と地域格差も見て取れます。
2.学校現場では納付金を払えない家庭も…
  • (図3)あなたの学級に、学校納入金が未払いな実態がありますか?(図4)学年費、学級費や副教材費などの学校納入金を決める際に、保護者負担軽減を意識していますか?
  • 納入金に関する先生方の声
    • 倒産による影響で職を失った家庭があります。厳しい経済状況のようで、新規の集金は遠慮しています。(山形県)
    • 修学旅行や自然学校に行く費用が払えず、参加できない児童がいます。(兵庫県)
    • 修学旅行のスナップ写真を販売してもお金のことを考えて買わない子どもがいます。集金に気をつかう子どもの様子に心が痛みます。(大分県)
    • 休み時間の子ども同士の会話や学活の場などで「○○さんのところはお金持ち」「うちは貧乏」という声が多く聞かれるようになったと感じます。(鹿児島県)
  •  その実感値を把握するために「日本の教育を考える10人委員会」が教育現場の協力をえて行った教員へのアンケート調査では、「家庭の経済力の格差が教育の格差につながっていると思う」とする声は8割以上(81.5%)で、保護者調査よりもさらに高い割合を示しました。
     実際に、公立の小中学校で鉛筆やノートなどの文房具代や給食費や修学旅行費などが支払えない家庭が増加しています。文部科学省の調査では、経済的に困窮している家庭に市町村が各用品の費用などを援助する「就学援助」を受けている子どもは、全国で約130万人(平成16年度)。受給率の全国平均は10%を超えています。
     先の教員アンケート調査でも、自分の学級に納入金の未払いの子どもがいると答えた割合は約半数にも及んでいます(図3)。また、学校納入金を決めるときに保護者負担の軽減を意識している教員が92.5%に達する(図4)など、家庭の経済事情が教育現場に確実に影を落としているといえます。
3.子どもたちの誰もが夢を抱ける環境を…
  • (図5)ひとクラスあたりの児童生徒数は何人がよいと思いますか?
  •  経済的困窮が理由でT格差はさらに広がることになります。
     日本国憲法第26条では、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」とあります。経済的理由によって、教育を受ける権利が制限されるのは望ましい状態とはいえません。
     教育格差を解消する方法のひとつは、公教育の質を高めることです。その具体策として「少人数学級」があります。「日本の教育を考える10人委員会」のアンケート調査でも多くの保護者が少人数学級の実現を望んでいます(図5)
     少人数学級では、一人ひとりの子どもに目が行き届き、教員が子どもたちと向き合う時間が増えます。同時に、学級の数が増えることになり、学校全体の教員の数も増加します。学校行事や部活指導などに忙しい先生方も教科指導以外の仕事をみんなで分担し、負担を軽減することができます。
日本の教育を考える10人委員会調べ(2007年10月)
対象:小学生〜高校生(特別支援学校を含む)の子どもをもつ保護者3000人
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