鳥取地震、熊本地震で被災したみなさま
被災地で支援活動をするみなさまへ

 鳥取地震、熊本地震で被災したみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。予期せぬ災害が起こった時、その心理的ストレスは想像以上に大きなものであり、ストレスへの適切な対応が必要とされます。子どもたちの心のケアになる、「子ども応援便り」編集室および関係団体が過去に製作した内容を再編集して、掲載いたしました。

2016年10月31日更新 子ども応援便り編集室

Q&A

地震後、子どもはかなり疲れているはずなのに夜、なかなか寝ようとしません。

子どもでも大人でも、“眠れない”ということがよく起こります。余震が繰り返し起こる中であれば、なおさらです。そんな中では、まず、避難している場所の耐震性について、子どもに分かりやすく伝え安心させることがポイントです。人や動物は、危機に直面すると、命を守るために心拍を速めるなど、生理的興奮の度合いが高まります。過酷な状況がある程度緩和しても、その生理的興奮が静まらないのです。それを「過覚醒」といいます。 そんな時は、マッサージや体のもみほぐし、リラックス動作法が有効です。マッサージとまでいかなくても「肩をたたいてもらう」「肩に手を置いてもらう」「疲れている体の部位に手を置いてもらう」といった「してもらう」体験だけでも、体が楽になります。避難所で、子どもが高齢者の肩に手を置くだけでも、ほっとするかもしれません。

一方、リラクセーションは、「してもらう」から「自分でゆるめる・自分で動かす」体験です。簡単な呼吸法や遊びの中でリラックスする方法などを身につけておくと、寝つけないときの助けになります。

夜中に子どもが悪夢にうなされているようです。

命を脅かされるような体験をトラウマ体験といいます。トラウマは、記憶のされ方が、日常の体験と異なることが分かっています。例えれば、“凍り付いた記憶の箱”です。体が楽になるとトラウマ記憶が活性化し、記憶のふたが、開けたくないのに開いてしまいます。これがフラッシュバックです。悪夢は夢の中でのフラッシュバックです。

夜泣き叫んだら、「怖かったね」と抱きしめて、「もう大丈夫だよ」と背中をさすってあげるともいいでしょう。朝になると、夜のことを覚えていないことがあります。それは、眠っている時に、凍り付いた記憶の箱のふたが溶けて怖い思いがよみがえっても、朝になると、また、その記憶の箱が凍り付いていて、思い出せないということなのです。そうして、少しずつ、心を整理していきます。日中は、楽しいこと、将来の楽しみなことを、子どもと話し合うのもいいでしょう。

子どもが地震ごっこをするのですが、どうすればいいでしょう。

少しほっとできるようになると、地震ごっこを始めることがあります。危険でなければ、止めないで見守ったり、一緒に、「わー、揺れてるね、怖かったね」と声をかけたりするのもいいでしょう。
命を脅かされるような体験をトラウマ体験といいます。トラウマは、記憶のされ方が、日常の体験と異なることが分かっています。例えれば、“凍り付いた記憶の箱”です。少しほっとして安心すると、記憶の箱の氷が溶けて、大人であれば、思い出して苦しくなりつらくなる、フラッシュバックという反応が出ます。子どもの場合、これが地震ごっこという形で出ることがあります。その“記憶の箱”に入り込み、その時の恐怖を繰り返して表出しているのです。ただしこれは、むしろ、回復する過程の反応、当然の反応と捉えるといいでしょう。
しかし、この遊びを繰り返し行い続けるようであれば、「がんばって、遊んだね、すごいね、ちょっと休憩しようか」と、膝の上にだっこして、一緒に両手を伸ばしたり、肩をぎゅーと上げ、ストンと力を抜くのをお手伝いしてあげて、リラックス体験ができるようにしてもいいでしょう。そうすると、その記憶の箱から離れて、少し落ち着いて、怖かったことを受け止めることができるようになります。

地震後、子どもが私にぴったりとくっついて離れません。不安なのでしょうか?

ショックの後、幼い子どもは、信頼できる人にべったりとくっつき離れられなくなったり、今まで自分でできていたことができなくなったりします。これは「退行」と呼ばれています。ショックの後の甘えや退行は、回復の第一歩と考えてください。ショックを受けてしばらくの間は、子どもがこうした行動をとった時には、「いいよ、ついていってあげるよ、一緒にいてあげるよ」と声をかけるといいでしょう。安心感が戻ってくると、子どもの方から離れていきます。

地震や災害の報道を見聞きするたび、子どもが怖がります。

人は、知らないことや分からないことは過大に捉えてしまい、怖く感じるものです。まずは、地震の知識やメカニズムを正しく伝えることが有効です。さらには、災害時にどう対応するか、どこに集まるかなどを話し合い、もしもの時にも備えていることを理解すれば、ぐっと安心するでしょう。

しばらく経ってから不安定になる子どもも多いと聞き、今後が心配です。

時間が経つにつれ、地震への恐怖心は薄れる一方で、家庭の経済的な問題などが深刻化し、子どもに影響することがあります。
子どもは、大人が思っている以上に、「親に心配をかけてはいけない」という思いを強く持っています。保護者のみなさんは、まずそのことを知り、復興過程で起こるさまざまな問題の影響が子どもに向かないよう、リラクセーションなどを活用し、自らのストレスを軽減するよう努めることも大切です。

監修:冨永良喜(兵庫教育大学教授/日本ストレスマネジメント学会理事長)

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